一般条項

完全合意条項について解説

完全合意条項について解説

完全合意条項は、契約書等に記載されていない合意には効力を認めないとする条項です。口頭での合意の有無や内容が争いになることを予防したり、契約書に記載されていない事項についての相手の要求を封じる機能を有しています。

この記事では、完全合意条項について、弁護士が解説をしています。

完全合意条項の意義、具体例、機能

完全合意条項の意義、具体例、機能について解説していきます。

完全合意条項の意義、具体例

冒頭でも述べたとおり、完全合意条項は、契約書等に記載されていない合意には効力を認めないとする条項です。

完全合意条項の契約書での規定の仕方は、様々なバリエーションがありますが、例えば、以下のように定められています。

完全合意条項の例

本契約は、本契約における対象事項に関する当事者の最終的かつ完全な合意を構成するものであり、本契約締結以前における明示または黙示の合意、協議、その他の約束は本契約締結後一切の効力を有しない。

完全合意条項の機能

民法上、契約は口頭でも成立のが原則です。そのため、後日、契約当事者間で「言った、言わない」の争いが生じることがあります。

完全合意条項を定めれば、契約書に記載された合意のみが効力を有することになるので、完全合意条項は後日の「言った、言わない」の争いを予防する機能を有します。

もっとも、契約交渉期間中のやり取りは、契約書で定められた明文の条項の解釈の際に参考にされることがあります。

  • 契約は口頭でも成立するのが民法の原則
  • 完全合意条項により口頭での合意が問題となるのを予防できる
  • 完全合意条項が定められている場合でも、契約書に明記されていない交渉期間中のやり取りは、明記されている条項の解釈の参考にされることがある

完全合意条項が使われる契約

完全合意条項は、もともと英米法上の口頭証拠排除原則を明文化したものなので、日本国内の契約書にはあまり使われていません。

比較的よくみかけるのは、国際取引の契約書のほかは、株式譲渡契約書、ライセンス付与系の契約書などです。性質上当然かもしれませんが、規定されているのは比較的ボリュームの多い契約書が多いです。

数的には筆者が普段仕事で接する契約書では5%もないという印象です。

完全合意条項を定めるメリット、デメリット

完全合意条項を定めるメリットとしては、以下のものが考えられます。

メリット
  • 契約内容が明確になり、「言った、言わない」の後日の紛争を予防できる
  • 想定外の義務が生じることを予防できる
  • 契約書に記載されていない相手からの要求を封じることができる
デメリット
  • 合意内容をすべて書面化しなければならず、契約書作成コストが増加する
  • 契約交渉期間中に積み重ねられた合意内容が契約書に記載されていないと無意味化する
  • 契約条件を変更する場合には逐一書面化が必要

完全合意条項が問題となった事例

完全合意条項が問題となった事例を紹介します。

完全合意条項の存在を理由に、契約に明示されていない最恵待遇条項の合意が否定された事例

東京地判平成18年12月25日は、液晶パネル及び液晶モジュールの使用、展示、販売又は処分する実施を被告(ライセンシー)に許諾した原告(ライセンサー)が、未払いの実施料を請求した事案で、

「本件契約書には完全合意条項が設けられているから、仮に、本件契約締結前に、○○(原告の担当者)と△(被告の担当者)との間で最恵待遇条項(※)の合意が成立していたとしても、原告と被告との間に、本件契約書に明記されていない最恵待遇条項を含む契約が成立したものとは認め難い。」

として、最恵待遇条項の合意の成立を否定しました。

※当該契約よりも有利な契約を第三者と締結する場合は、その有利な契約条件と同一の内容に当該契約も修正する合意を定める条項

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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属) 基本情報技術者

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