ひな形

フリーランスのための業務委託契約書の作り方、ひな形無料公開

フリーランスのための業務委託契約書

この記事では、

  • 受注先企業から契約書を用意するよう依頼された
  • 契約書を作成して自分の権利をしっかり守りたい
  • 契約書がなくて痛い目にあったことがある

という独立または副業フリーランス(個人事業主)のために、契約書業務を本業とする弁護士が、業務委託契約書の作成方法を解説しています。

ひな形も4パターン無料公開しています。

本記事の目的

一般的に契約上の立場が弱いフリーランスにとって契約書は、自分の身を守るための重要なツールです。

そのため、フリーランスは自己の提供するサービスに関する契約書を、弁護士等の契約書の専門家に作成を依頼するのが望ましいです。

しかしながら、弁護士に契約書作成を依頼すると10万円程度はかかってしまいます。取引規模の大きくないフリーランスにとって、10万円程度の負担は大きいという声をよく聞きます。

なかには数千円から数万円程度で契約書のひな形が情報商材のような形で販売されているものもみかけます。

しかし、有料のひな形であっても本当に契約書業務に精通している人によって作成されているのか疑問があるものもあります。

また、フリーランスの業務は様々であり、一律にひな形で解決できるものではありません。

お金をかけられないなら自分で勉強するしかありませんが、何から手をつけていいかも分からない人が多いのではないかと思います。

そこで、この記事では、契約書業務を本業とする弁護士が、フリーランスに必要な契約書について、ひな形を無料で公開しつつ解説をしていきます。

コメントに質問をいただければできる限り回答する予定です。

契約書がないことによるリスク、デメリット

契約書がないことによるリスク、デメリットは多々あります。

契約書を作成、取り交わす手間と契約書がないことによるリスク、デメリットを十分に考慮すべきです。

リスク、デメリットの例
  • 代金に関するトラブルが生じやすくなる
  • 忘れたころにやってくる損害賠償請求
  • 遠方で裁判を起こされ多額の弁護士費用が必要に、、、

代金に関するトラブルが生じやすくなる

契約書がないことによるトラブルで多いのは代金トラブルです。

業務の範囲が不明確だと、「これは依頼した業務の範囲内のはずだ。」とか「これは業務の範囲外だから追加費用が必要だ。」といった認識の違いが発生しやすく、代金に関するトラブルが発生します。

請負契約に関する代金関係のトラブルはかなりの部分が、業務の範囲の不明確さが原因となっています。

このようなトラブルを避けるには、契約書で業務範囲と対応する報酬について明確にしておく必要があります。

忘れたころにやってくる損害賠償請求

民法改正により、請負の契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の期間が、引渡しから1年だったものが、注文者が契約不適合を知ったときから1年間というように変更されました。

この改正により、例えば引渡しから5年経過した後でも、仕事に不備があったとして契約不適合責任を追及されることがありえることになりました。

そのため、多くの請負契約書では、民法の原則より請負人を有利にするため契約不適合責任の期間を短くする修正が加えられています。

契約書を作成していないと、契約不適合責任期間が民法どおりとなってしまい、契約から何年も経った忘れたころに損害賠償請求を受けるといったことがありえます。

遠方で裁判を起こされ多額の裁判費用が必要に、、、

契約書では、裁判になったときにどこの裁判所を使うかということも定めます。

地元企業との取引であればさほど問題になることはありませんが、場合によっては取引相手の本社が遠方にあることもあります。

裁判をする場所が遠方だとその分弁護士費用は高くなりがちです。弁護士に依頼しなければ、代表者自らが裁判に出頭しなければなりません。交通費や宿泊費もかかってきます。

そのため、裁判をどこでやるかというのはトラブル発生時の交渉面でも重要になってきます。

契約書でどこの裁判所を使うかということをしっかり定めておかないと、自分側に不利な裁判所で裁判を起こされてしまう可能性があります。

フリーランスに必要な契約書のほとんどは業務委託契約書

フリーランスのビジネスは、クライアントから何らかの業務の受託を受けて、それに対して報酬を貰うというものがほとんどです。

フリーランスの業務の例
  • ウェブ制作、プログラミング等の受託業務
  • 人事・財務・販促・マーケティング等のコンサルティング・支援業務
  • 写真撮影、動画撮影・編集、イラスト制作、デザイン、ライティング等のクリエイター業務
  • 通訳・翻訳等の専門的業務

これらの業務の受託にあたって必要となる契約は業務委託契約書になります。

名称自体は特にこだわらなくてかまいません。

契約の内容が請負か準委任かを確認する

フリーランスがクライアントから業務を受託する契約は、請負契約か準委任契約のいずれかあるいはそれらが混合した契約に分類できます。

請負契約か準委任契約かで契約書の作り方が異なってくるのでまずはここを確認します。

区別するポイントは業務の目的

業務委託契約が請負契約であるか準委任契約であるかを区別するポイントは、契約の目的です。

契約の目的が仕事の完成なら請負契約、契約の目的が事務処理の遂行自体であれば準委任契約になります。

  • 契約の目的が仕事の完成なら請負契約
  • 契約の目的が事務処理の遂行自体であれば準委任契約
仕事の完成と事務処理の遂行の違いがいまいちわかりません。
たしかにここはプロでも判断に迷うことがある難しいところです。以下では具体例を出して解説していきます。

請負契約とされる業務の例

請負契約は、仕事の完成が契約の目的である契約です。

例えば、何かを制作して引き渡すという内容の契約は請負契約とされることが多いです。

以下は、請負契約とされる業務の例ですが、内容によっては準委任契約とされたり、準委任と請負契約の混合契約とされたりする場合があります。

請負契約とされる業務の例
  • ホームページ、バナー、画像、動画、チラシ等の制作業務
  • イラスト、各種デザインの制作業務
  • ライティング業務
  • 翻訳業務
  • システム開発のうちのプログラミング業務

準委任契約とされる業務の例

準委任契約は、事務処理の遂行自体が契約の目的である契約です。

請負は、失敗は許されず仕事を文字通り完成させなければいけませんが、準委任契約の場合は約束された事務処理自体を過失なく遂行していれば債務は履行したことになります。

準委任契約の典型的なものとしては、医師の診療契約です。医療ミスなく診療さえすれば、仮に病気が治らなくても債務は履行されたことになります。

以下は、準委任契約とされる業務の例ですが、内容によっては請負契約とされたり、準委任と請負契約の混合契約とされたりする場合があります。

準委任契約とされる業務の例
  • 各種コンサルティング・支援業務
  • 写真撮影業務
  • 通訳業務
  • システム開発のうちの要件定義業務

1回限りの契約か継続的な契約か

ある業務を1回限りで受託する場合でも、取引金額が大きい場合や権利義務関係を明確にしておきたい場合、法令上契約書面の作成が義務付けられている場合は契約書を作成すべきです。

継続的な業務受託が予定されている場合は、個別の契約に関するルールを定めた基本契約書を作成することになります。

継続的な取引関係が予定されている場合は基本契約書を作成する

請負契約型の業務委託契約書のひな形

請負契約型の業務委託契約書、業務委託基本契約書のひな形を公開します。赤字は各条項、記載部分の解説です。コピペする際は、解説部分は削除してください。

実際に使用する際は、なるべく弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

1回限りの契約書のひな形(請負型)

業務委託契約書

 ○○(以下「委託者」という。)と△△(以下「受託者」という。)は、委託者が受託者に対し、□□を委託するにあたって、次のとおり業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。

【前文(頭書き)には、契約の当事者や、締結する契約の内容について記載します。】

第1条(委託業務の内容)
委託者は、受託者に対し、以下の内容で業務を委託する(以下「本業務」という。)。
業務内容:
納期:
納入方法:
委託料:

【重要な条項です。受託する業務内容(発生する成果物)や委託料はできる限り詳細に記載しましょう。業務内容の範囲が曖昧ですと、業務内容に変更や追加があった場合に、追加代金の請求などでトラブルが発生する確率が高まります。ウェブサイトの作成の場合などは別紙で仕様書を添付することも検討します。】

第2条(支払方法)
委託者は、本業務の委託料を、本業務の成果物の納入日が属する月の末日を締日として、翌月末日までに受託者の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は委託者の負担とする。

【個人事業主であるフリーランスへの報酬の支払いには源泉徴収が必要になるケースがほとんどです。支払側の問題ではありますが、源泉徴収義務を認識していない事業者もいるので請求書などには源泉徴収額を明記しておくべきです。】

第3条(検査)
委託者は、受託者から納入を受けた成果物について、納入日の翌日から起算して5営業日以内に種類、品質及び数量について検査し、その合否の結果を受託者に通知しなければならない。
2.前項の期限内に前項の通知が受託者に到達しない場合、前項の検査に合格したものとみなす。

第4条(契約不適合責任)
委託者は、前条の規定による検査において、納入された成果物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないこと(以下「契約不適合」という。)を発見した場合は、同条の期限内にその旨を受託者に通知する。
2.前項の場合、委託者は、受託者に対し、当該成果物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
3.委託者は、受託者に対し、本契約の委託料を上限として、契約不適合に起因して発生した損害の賠償を請求することができる。
4.前条の規定による検査終了後、検査時において直ちに発見できない契約不適合が発見された場合は、納入日から3ヶ月以内に限り、受託者は本条の契約不適合責任を負う。

【成果物に問題があった場合の処理を定める条項です。民法の原則では契約不適合責任を追及できる期間は、何も定めなかった場合、不適合を知った時から1年以内です。必要に応じて民法の修正を図ります。】

第5条(所有権)
成果物の所有権は、委託料が支払われた時に受託者から委託者に移転する。

第6条(知的財産権)
本業務により受託者が制作した成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)等の知的財産権は受託者に帰属する。

【フリーランスが受託者になる取引の多くの場合、知的財産権については委託者に帰属するという内容に修正されることが予想されます。その場合、著作権の譲渡の対価がきちんと委託料に反映されているか確認し、必要に応じて交渉しましょう。】

第7条(危険負担)
成果物の納入前に生じた損害は、委託者の責に帰すべき事由によるものを除き受託者の負担とし、成果物の納入後に生じた損害は、受託者の責に帰すべき事由によるものを除き委託者の負担とする。

第8条(秘密保持)
受託者は、委託者の承諾なくして、本契約に関連して委託者から秘密であることを明示して開示された営業上または技術上の秘密情報(以下「秘密情報」という。)を、第三者に対して開示、漏洩してはならず、本契約の履行以外の目的で使用してはならない。ただし、以下のいずれかに該当する情報は秘密情報には含まれない。
(1)開示された時点において、既に公知であった情報
(2)開示された後に受託者の責任によらないで公知になった情報
(3)開示された時点において、受託者が既に了知していた情報
(4)正当な権限を有する第三者から、受託者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報

【秘密情報の取扱いについては、委託者から別途秘密保持契約の締結を求められる場合があります。秘密情報の範囲について十分に確認しておくことが重要です。】

第9条(再委託の禁止)
受託者は、あらかじめ書面により委託者の承諾を得なければ、本業務の全部または一部を、第三者に再委託することができない。
2.受託者は、前項の規定により第三者に再委託する場合も、本契約に規定する受託者の義務を免れず、かつ第三者に対しても本契約上の義務を遵守させる義務を負う。

【請負契約の場合、民法の原則では再委託は自由ですが、フリーランスを受託者とする取引の場合は属人的要素を重要視して、再委託を原則禁止とされることが多いでしょう。】

第10条(権利義務の譲渡等の禁止)
委託者及び受託者は、あらかじめ書面により相手方の承諾を得なければ、本契約上の権利義務ならびに本契約上の地位を、第三者に譲渡、移転その他の方法により処分してはならない。

第11条(損害賠償)
本契約に違反し、相手方に損害を負わせた当事者は、本契約の委託料を上限として当該違反に起因して発生した損害を賠償しなければならない。

【損害が拡大してしまうおそれがある取引の場合は、賠償額の上限を設けることがあります。ただし、損害を発生させた当事者に故意・重過失がある場合は、上限規定は適用されないという裁判例があります。】

第12条(不可抗力)
委託者及び受託者は、天災地変、戦争、内乱、暴動、疫病、感染症の流行等、当事者の合理的支配を超える事由により、義務の履行の全部または一部が妨げられる範囲において、本契約に基づく義務の履行を免除され、一切の責任を負わない。

第13条(解除)
委託者及び受託者は、相手方が本契約に違反したときは、相当の期間を定めた催告をし、催告期間が終了しても違反が是正されない場合、本契約を解除できる。
2.委託者及び受託者は、相手方に次の各号いずれかに該当する事由が生じたときは、何らの催告を要することなく、直ちに本契約を解除することができる。
(1)本契約の違反が重大なとき
(2)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の申立てがあったとき
(3)差押え、仮差押え等の強制執行、または公租公課の滞納処分を受けたとき
(4)支払停止、または支払い不能に陥ったとき、若しくは手形が不渡となったとき
3.前二項の定めにより本契約が解除された場合でも、解除権を行使した当事者は損害賠償の請求を妨げられない。

第14条(反社会的勢力の排除)
委託者及び受託者は、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2.委託者及び受託者は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、ただちに本契約を解除することができ、解除により相手方に損害が生じてもこれを賠償することを要しない。
(1)相手方または相手方の役員が反社会的勢力に該当すると認められるとき
(2)相手方の経営に反社会的勢力が実質的に関与していると認められるとき
(3)相手方が反社会的勢力を利用していると認められるとき
(4)相手方が反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき
(5)相手方または相手方の役員もしくは相手方の経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき
(6)自らまたは第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的な言動、暴力および風説の流布・偽計・威力を用いた信用毀損・業務妨害その他これらに準ずる行為に及んだとき
3.委託者及び受託者は、自己が前項各号に該当したため相手方が本契約を解除した場合、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

【反社会的勢力と取引しないよう、また万が一取引してしまっても速やかに契約を解消できるよう反社会的勢力の排除条項を入れておくのが一般的です。】

第15条(存続条項)
第4条(契約不適合責任)、第6条(知的財産権)、第8条(秘密保持)、第11条(損害賠償)、第16条(管轄)の規定は、本契約の終了後も有効に存続する。

第16条(管轄)
本契約に関する一切の紛争は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第17条(協議事項)
本契約に定めのない事項、ならびに本契約の解釈について疑義を生じたときは、当事者間で誠実に協議のうえ解決する。

本契約の締結を証するため、本書を2通作成し、委託者及び受託者記名押印の上、それぞれ1通を保有する。

20  年  月  日

(委託者)

(受託者)

業務委託基本契約書のひな形(請負型)

業務委託基本契約書

 ○○(以下「委託者」という。)と△△(以下「受託者」という。)は、委託者が受託者に対し、□□を委託するにあたって、次のとおり業務委託基本契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(適用範囲)
本契約は、本契約有効期間中に締結された委託者及び受託者間の□□(以下「本業務」という。)を委託する契約(以下「個別契約」という。)に適用される。ただし、個別契約に本契約と異なる定めがある場合は、個別契約の定めが本契約に優先して適用される。

【この基本契約が適用される契約の範囲について定めます。個別契約と条件が異なる場合に備え、優先関係も明確にしておきます。】

第2条(個別契約の成立)
個別契約は、委託者が、受託者に対し、本業務を所定の方法により注文し、受託者がこれを承諾する旨の通知をすることによって成立する。

【個別契約を成立させるための方法を記載します。例)所定の受発注書をやり取りする等】

第3条(本業務の内容等)
本業務の内容、納期及び委託料等は個別契約において定める。

第4条(委託料)
委託者は、個別契約で定められた本業務の委託料を、本業務の成果物の納入日が属する月の末日を締日として、翌月末日までに受託者の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は委託者の負担とする。

第5条(納入)
受託者は、個別契約で定められた納期までに、委託者の指定する納入場所に成果物を納入する。

第6条(検査)
委託者は、受託者から納入を受けた成果物について、納入日の翌日から起算して5営業日以内に種類、品質及び数量について検査し、その合否の結果を受託者に通知しなければならない。
2.前項の期限内に前項の通知が受託者に到達しない場合、前項の検査に合格したものとみなす。

第7条(契約不適合責任)
委託者は、前条の規定による検査において、納入された成果物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないこと(以下「契約不適合」という。)を発見した場合は、同条の期限内にその旨を受託者に通知する。
2.前項の場合、委託者は、受託者に対し、当該成果物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
3.委託者は、受託者に対し、契約不適合が生じた個別契約の委託料を上限として損害の賠償を請求することができる。
4.前条の規定による検査終了後、検査時において直ちに発見できない契約不適合が発見された場合は、納入日から3ヶ月以内に限り、受託者は本条の契約不適合責任を負う。

第8条(所有権)
成果物の所有権は、委託料が支払われた時に受託者から委託者に移転する。

第9条(知的財産権)
本業務により受託者が制作した成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)等の知的財産権は受託者に帰属する。

第10条(危険負担)
成果物の納入前に生じた損害は、委託者の責に帰すべき事由によるものを除き受託者の負担とし、成果物の納入後に生じた損害は、受託者の責に帰すべき事由によるものを除き委託者の負担とする。

第11条(秘密保持)
受託者は、委託者の承諾なくして、本契約または個別契約に関連して委託者から開示された営業上または技術上の秘密情報(以下「秘密情報」という。)を、第三者に対して開示、漏洩してはならず、本契約または個別契約の履行以外の目的で使用してはならない。ただし、以下のいずれかに該当する情報は秘密情報には含まれない。
(1)開示された時点において、既に公知であった情報
(2)開示された後に受託者の責任によらないで公知になった情報
(3)開示された時点において、受託者が既に了知していた情報
(4)正当な権限を有する第三者から、受託者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報

第12条(再委託の禁止)
受託者は、あらかじめ書面により委託者の承諾を得なければ、本業務の全部または一部を、第三者に再委託することができない。
2.受託者は、前項の規定により第三者に再委託する場合も、本契約及び個別契約に規定する受託者の義務を免れず、かつ第三者に対しても本契約及び個別契約上の義務を遵守させる義務を負う。

第13条(権利義務の譲渡等の禁止)
委託者及び受託者は、あらかじめ書面により相手方の承諾を得なければ、本契約及び個別契約上の権利義務ならびに本契約及び個別契約上の地位を、第三者に譲渡、移転その他の方法により処分してはならない。

第14条(損害賠償)
本契約または個別契約に違反し、相手方に損害を負わせた当事者は、当該違反に関連する個別契約の委託料を上限として当該違反に起因して発生した損害を賠償しなければならない。

第15条(不可抗力)
委託者及び受託者は、天災地変、戦争、内乱、暴動、疫病、感染症の流行等、当事者の合理的支配を超える事由により、義務の履行の全部または一部が妨げられる範囲において、本契約及び個別契約に基づく義務の履行を免除され、一切の責任を負わない。

第16条(解除)
委託者及び受託者は、相手方が本契約または個別契約に違反したときは、相当の期間を定めた催告をし、催告期間が終了しても違反が是正されない場合、本契約及び個別契約を解除できる。
2.委託者及び受託者は、相手方に次の各号いずれかに該当する事由が生じたときは、何らの催告を要することなく、直ちに本契約及び個別契約を解除することができる。
(1)本契約または個別契約の違反が重大なとき
(2)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の申立てがあったとき
(3)差押え、仮差押え等の強制執行、または公租公課の滞納処分を受けたとき
(4)支払停止、または支払い不能に陥ったとき、若しくは手形が不渡となったとき
3.前二項の定めにより本契約または個別契約が解除された場合でも、解除権を行使した当事者は損害賠償の請求を妨げられない。

第17条(反社会的勢力の排除)
委託者及び受託者は、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2.委託者及び受託者は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、ただちに本契約及び個別契約を解除することができ、解除により相手方に損害が生じてもこれを賠償することを要しない。
(1)相手方または相手方の役員が反社会的勢力に該当すると認められるとき
(2)相手方の経営に反社会的勢力が実質的に関与していると認められるとき
(3)相手方が反社会的勢力を利用していると認められるとき
(4)相手方が反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき
(5)相手方または相手方の役員もしくは相手方の経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき
(6)自らまたは第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的な言動、暴力および風説の流布・偽計・威力を用いた信用毀損・業務妨害その他これらに準ずる行為に及んだとき
3.委託者及び受託者は、自己が前項各号に該当したため相手方が本契約または個別契約を解除した場合、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

第18条(有効期間)
本契約は、本契約締結日から1年間有効とし、その後は、期間満了1ヶ月前までに、委託者または受託者から相手方に更新しない旨の通知がない限り、1年ごとの期間について自動更新される。
2.第7条(契約不適合責任)、第9条(知的財産権)、第11条(秘密保持)、第14条(損害賠償)、第19条(管轄)の規定は、本契約及び個別契約の終了後も有効に存続する。

【基本契約の有効期間を定めます。自動更新としているものが多いです。】

第19条(管轄)
本契約及び個別契約に関する一切の紛争は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第20条(協議事項)
本契約及び個別契約に定めのない事項、ならびに本契約または個別契約の解釈について疑義を生じたときは、当事者間で誠実に協議のうえ解決する。

本契約の締結を証するため、本書を2通作成し、委託者及び受託者記名押印の上、それぞれ1通を保有する。

20  年  月  日

(委託者)

(受託者)

準委任契約型の業務委託契約書のひな形

1回限りの契約書のひな形(準委任型)

業務委託契約書

○○(以下「委託者」という。)と△△(以下「受託者」という。)は、委託者が受託者に対し、□□を委託するにあたって、次のとおり業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(委託業務の内容)
委託者は、受託者に対し、以下の内容で業務を委託する(以下「本業務」という。)。
業務内容:
納入物:
業務期間:
委託料:

【業務内容や(納入物がある場合は)納入物等をなるべく具体的に定めておきます。なかなか事前に定めておくのは難しいですが、途中で契約が終了した場合の委託料の処理なども検討しておくべきです。】

第2条(支払方法)
委託者は、本業務の委託料を、  年 月 日までに受託者の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は委託者の負担とする。

第3条(報告)
受託者は、本業務の完了後、速やかに委託者に対し、業務完了報告書を交付する。
2.委託者は、前項の業務完了報告書を受領した日の翌日から起算して5営業日以内に、その内容を確認した旨の通知しなければならない。
3.前項に基づく委託者から受託者への通知があったときに本業務は完了したものとし、前項の期限内に前項の通知が受託者に到達しない場合も同様とする。

第4条(所有権)
納入物の所有権は、委託料が支払われた時に受託者から委託者に移転する。

第5条(知的財産権)
本業務により受託者が制作した納入物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)等の知的財産権は受託者に帰属する。

第6条(危険負担)
納入物の納入前に生じた損害は、委託者の責に帰すべき事由によるものを除き受託者の負担とし、納入物の納入後に生じた損害は、受託者の責に帰すべき事由によるものを除き委託者の負担とする。

第7条(秘密保持)
受託者は、委託者の承諾なくして、本契約に関連して委託者から秘密であることを明示して開示された営業上または技術上の秘密情報(以下「秘密情報」という。)を、第三者に対して開示、漏洩してはならず、本契約の履行以外の目的で使用してはならない。ただし、以下のいずれかに該当する情報は秘密情報には含まれない。
(1)開示された時点において、既に公知であった情報
(2)開示された後に受託者の責任によらないで公知になった情報
(3)開示された時点において、受託者が既に了知していた情報
(4)正当な権限を有する第三者から、受託者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報

第8条(再委託の禁止)
受託者は、あらかじめ書面により委託者の承諾を得なければ、本業務の全部または一部を、第三者に再委託することができない。
2.受託者は、前項の規定により第三者に再委託する場合も、本契約に規定する受託者の義務を免れず、かつ第三者に対しても本契約上の義務を遵守させる義務を負う。

【準委任契約の場合、民法の原則では原則再委託は不可です。】

第9条(権利義務の譲渡等の禁止)
委託者及び受託者は、あらかじめ書面により相手方の承諾を得なければ、本契約上の権利義務ならびに本契約上の地位を、第三者に譲渡、移転その他の方法により処分してはならない。

第10条(損害賠償)
本契約に違反し、相手方に損害を負わせた当事者は、本契約の委託料を上限として当該違反に起因して発生した損害を賠償しなければならない。

第11条(不可抗力)
委託者及び受託者は、天災地変、戦争、内乱、暴動、疫病、感染症の流行等、当事者の合理的支配を超える事由により、義務の履行の全部または一部が妨げられる範囲において、本契約に基づく義務の履行を免除され、一切の責任を負わない。

第12条(解除)
委託者及び受託者は、相手方が本契約に違反したときは、相当の期間を定めた催告をし、催告期間が終了しても違反が是正されない場合、本契約を解除できる。
2.委託者及び受託者は、相手方に次の各号いずれかに該当する事由が生じたときは、何らの催告を要することなく、直ちに本契約を解除することができる。
(1)本契約の違反が重大なとき
(2)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の申立てがあったとき
(3)差押え、仮差押え等の強制執行、または公租公課の滞納処分を受けたとき
(4)支払停止、または支払い不能に陥ったとき、若しくは手形が不渡となったとき
3.前二項の定めにより本契約が解除された場合でも、解除権を行使した当事者は損害賠償の請求を妨げられない。

第13条(反社会的勢力の排除)
委託者及び受託者は、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2.委託者及び受託者は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、ただちに本契約を解除することができ、解除により相手方に損害が生じてもこれを賠償することを要しない。
(1)相手方または相手方の役員が反社会的勢力に該当すると認められるとき
(2)相手方の経営に反社会的勢力が実質的に関与していると認められるとき
(3)相手方が反社会的勢力を利用していると認められるとき
(4)相手方が反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき
(5)相手方または相手方の役員もしくは相手方の経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき
(6)自らまたは第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的な言動、暴力および風説の流布・偽計・威力を用いた信用毀損・業務妨害その他これらに準ずる行為に及んだとき
3.委託者及び受託者は、自己が前項各号に該当したため相手方が本契約を解除した場合、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

第14条(存続条項)
第5条(知的財産権)、第7条(秘密保持)、第10条(損害賠償)、第15条(管轄)の規定は、本契約の終了後も有効に存続する。

第15条(管轄)
本契約に関する一切の紛争は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第16条(協議事項)
本契約に定めのない事項、ならびに本契約の解釈について疑義を生じたときは、当事者間で誠実に協議のうえ解決する。

本契約の締結を証するため、本書を2通作成し、委託者及び受託者記名押印の上、それぞれ1通を保有する。

20  年  月  日

(委託者)
(受託者)

業務委託基本契約書のひな形(準委任型)

業務委託基本契約書

 ○○(以下「委託者」という。)と△△(以下「受託者」という。)は、委託者が受託者に対し、□□を委託するにあたって、次のとおり業務委託基本契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(適用範囲)
本契約は、本契約有効期間中に締結された委託者及び受託者間の□□(以下「本業務」という。)を委託する契約(以下「個別契約」という。)に適用される。ただし、個別契約に本契約と異なる定めがある場合は、個別契約の定めが本契約に優先して適用される。

第2条(個別契約の成立)
個別契約は、委託者が、受託者に対し、本業務を所定の方法により注文し、受託者がこれを承諾する旨の通知をすることによって成立する。

第3条(本業務の内容等)
本業務の内容、納入物、業務期間及び委託料等は個別契約において定める。

第4条(報告)
受託者は、本業務の完了後、速やかに委託者に対し、業務完了報告書を交付する。
2.委託者は、前項の業務完了報告書を受領した日の翌日から起算して5営業日以内に、その内容を確認した旨の通知しなければならない。
3.前項に基づく委託者から受託者への通知があったときに本業務は完了したものとし、前項の期限内に前項の通知が受託者に到達しない場合も同様とする。

第5条(委託料)
委託者は、個別契約で定められた本業務の委託料を、前項の業務完了日が属する月の末日を締日として、翌月末日までに受託者の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は委託者の負担とする。

第6条(所有権)
納入物の所有権は、委託料が支払われた時に受託者から委託者に移転する。

第7条(知的財産権)
本業務により受託者が制作した納入物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)等の知的財産権は受託者に帰属する。

第8条(危険負担)
納入物の納入前に生じた損害は、委託者の責に帰すべき事由によるものを除き受託者の負担とし、納入物の納入後に生じた損害は、受託者の責に帰すべき事由によるものを除き委託者の負担とする。

第9条(秘密保持)
受託者は、委託者の承諾なくして、本契約または個別契約に関連して委託者から開示された営業上または技術上の秘密情報(以下「秘密情報」という。)を、第三者に対して開示、漏洩してはならず、本契約または個別契約の履行以外の目的で使用してはならない。ただし、以下のいずれかに該当する情報は秘密情報には含まれない。
(1)開示された時点において、既に公知であった情報
(2)開示された後に受託者の責任によらないで公知になった情報
(3)開示された時点において、受託者が既に了知していた情報
(4)正当な権限を有する第三者から、受託者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報

第10条(再委託の禁止)
受託者は、あらかじめ書面により委託者の承諾を得なければ、本業務の全部または一部を、第三者に再委託することができない。
2.受託者は、前項の規定により第三者に再委託する場合も、本契約及び個別契約に規定する受託者の義務を免れず、かつ第三者に対しても本契約及び個別契約上の義務を遵守させる義務を負う。

第11条(権利義務の譲渡等の禁止)
委託者及び受託者は、あらかじめ書面により相手方の承諾を得なければ、本契約及び個別契約上の権利義務ならびに本契約及び個別契約上の地位を、第三者に譲渡、移転その他の方法により処分してはならない。

第12条(損害賠償)
本契約または個別契約に違反し、相手方に損害を負わせた当事者は、当該違反に関連する個別契約の委託料を上限として当該違反に起因して発生した損害を賠償しなければならない。

第13条(不可抗力)
委託者及び受託者は、天災地変、戦争、内乱、暴動、疫病、感染症の流行等、当事者の合理的支配を超える事由により、義務の履行の全部または一部が妨げられる範囲において、本契約及び個別契約に基づく義務の履行を免除され、一切の責任を負わない。

第14条(解除)
委託者及び受託者は、相手方が本契約または個別契約に違反したときは、相当の期間を定めた催告をし、催告期間が終了しても違反が是正されない場合、本契約及び個別契約を解除できる。
2.委託者及び受託者は、相手方に次の各号いずれかに該当する事由が生じたときは、何らの催告を要することなく、直ちに本契約及び個別契約を解除することができる。
(1)本契約または個別契約の違反が重大なとき
(2)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の申立てがあったとき
(3)差押え、仮差押え等の強制執行、または公租公課の滞納処分を受けたとき
(4)支払停止、または支払い不能に陥ったとき、若しくは手形が不渡となったとき
3.前二項の定めにより本契約または個別契約が解除された場合でも、解除権を行使した当事者は損害賠償の請求を妨げられない。

第15条(反社会的勢力の排除)
委託者及び受託者は、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2.委託者及び受託者は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、ただちに本契約及び個別契約を解除することができ、解除により相手方に損害が生じてもこれを賠償することを要しない。
(1)相手方または相手方の役員が反社会的勢力に該当すると認められるとき
(2)相手方の経営に反社会的勢力が実質的に関与していると認められるとき
(3)相手方が反社会的勢力を利用していると認められるとき
(4)相手方が反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき
(5)相手方または相手方の役員もしくは相手方の経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき
(6)自らまたは第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的な言動、暴力および風説の流布・偽計・威力を用いた信用毀損・業務妨害その他これらに準ずる行為に及んだとき
3.委託者及び受託者は、自己が前項各号に該当したため相手方が本契約または個別契約を解除した場合、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

第16条(有効期間)
本契約は、本契約締結日から1年間有効とし、その後は、期間満了1ヶ月前までに、委託者または受託者から相手方に更新しない旨の通知がない限り、1年ごとの期間について自動更新される。
2.第7条(知的財産権)、第9条(秘密保持)、第12条(損害賠償)、第17条(管轄)の規定は、本契約及び個別契約の終了後も有効に存続する。

第17条(管轄)
本契約及び個別契約に関する一切の紛争は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第18条(協議事項)
本契約及び個別契約に定めのない事項、ならびに本契約または個別契約の解釈について疑義を生じたときは、当事者間で誠実に協議のうえ解決する。

本契約の締結を証するため、本書を2通作成し、委託者及び受託者記名押印の上、それぞれ1通を保有する。

20  年  月  日

(委託者)

(受託者)

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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属) 基本情報技術者

POSTED COMMENT

  1. アバター しん より:

    契約書の作り方でこちらの記事はとても参考になっています。
    ありがとうございます。

    業務委託契約書を作る上での「成果物」の捉え方についてご質問です。

    以下のケースの場合、契約書への記し方がわかりません。

    最終的に、デザインデータを成果物として納品するが、そのサービスやプロダクトの方向性の相談や要件の取りまとめなどデザイン前の業務も行います。

    第2条(支払方法)の「本業務の成果物の納入日・・・」にあるような「成果物」についてですが、デザインデータという成果物だけでなく、手前の相談や要件のとりまとめ、また写真撮影の業務もあることが多いため、一口に成果物と一括にしづらいです。相談・要件まとめだけで1か月をまたぐ場合もあります。

    また、場合によっては、稼働した時間を時給または日給で計算して、毎月末に請求することも妥当なのではと思ったりしています。この場合の請求・支払い方法や検査などの記し方はどうするべきでしょうか?

    以上となります。
    稚拙な問い合わせで大変恐縮しておりますが、
    何卒ご教示いただけますことお願い申し上げます。

  2. 藤澤昌隆 藤澤昌隆 より:

    記事をご覧くださりありがとうございます。

    >最終的に、デザインデータを成果物として納品するが、そのサービスやプロダクトの方向性の相談や要件の取りまとめなどデザイン前の業務も行います。

    成果物となるデータの制作段階とそれまでの要件定義までの段階を分解すると、内容にもよりますが要件定義までの段階は本記事記載の準委任、データの制作段階は請負の性質をもつと考えられます。

    ある程度金額の大きい契約(1000万円以上)なら請負・準委任共通に適用される基本契約書を作成の上、各段階で個別契約を締結し、具体的な業務内容、支払い方法を定めます。

    この場合は、契約書作成の難易度も高く、取引金額的に法務コストをかけることも可能なのでプロに依頼してしまう方がよいと思います。

    一方、小さい金額の契約(小・中規模のウェブ制作の契約等)の場合であれば一通の契約書でまとめてしまうことが多いです。

    その場合、ご指摘のケースでは、最終的なデザインデータのみを成果物とすることが多いかと思います。要件定義書を作成する場合はそれを成果物とすることも可能です。細かい写真撮影などで独自の成果物を設定するものはあまりみません。

    成果物納入後の支払いでは遅いということであれば、例えば一定の金額を前金としたり、要件定義やデザイン案の決定がなされた時点で一定の金額を支払う内容とすることが考えられます。ウェブサイトの制作契約などではそういったものが多いかと思います。

    >場合によっては、稼働した時間を時給または日給で計算して、毎月末に請求することも妥当なのではと思ったりしています。この場合の請求・支払い方法や検査などの記し方はどうするべきでしょうか?

    稼働した時間(工数)に対して報酬が支払われる契約であれば、このような請求の仕方ができますが、多くの場合はクライアント側が要件定義の完了なり、作成したデータ等の成果物の納入に対して報酬が支払われるという内容の契約を希望するので、稼働時間に応じた請求とすることをクライアント側が了承することは少ないと思われます。

    もし、成果物の納入にこだわらずに稼働時間に応じて報酬を設定できる場合は、時間に応じた作業の提供自体が報酬の対価になるので、それ自体に検査を定める必要はありません。

    この場合は月末締めで稼働時間に関する業務報告書などを顧客に提供し、翌月末払いなどで支払いを設定することが考えられます。

    • アバター しん より:

      とてもわかりやすく丁寧にご回答くださいましてありがとうございます!
      クライアントとしっかり認識を合わせた上で、適したものを作るべきですね!
      要件定義書を成果物として捉える考え方はとても勉強になりました。
      ありがとうございます。

  3. アバター エックス より:

    とても明確にわかりやすく、委託者・受注者双方の権利と責任を書かれていてすごく参考にさせてもらいました。

    私は受注者側の人間で契約書関係はまったくの素人なのですが、委託者側に説明できる必要があると思い、理解したいのですが、読んでいて第7条(危険負担)が理解できなかったので、よろしければご教授おねがいします。

    >成果物の納入後に生じた損害は、受託者の責に帰すべき事由によるものを除き委託者の負担とする。
    というところで2つほど気になるところがありました。

    1つ目
    この条項が発動する例を挙げるとどのような事案なのでしょうか?
    私の受けた感じでは納品後に瑕疵や欠陥にあたるものなのかな?と思いました。しかし、その場合、第3条(検査)と第4条(契約不適合責任)との関係が整理できませんでした。
    または、成果物の品質など(第3条と第4条で明記済みのもの)ではなく、成果物自体に対する契約で、破損や水没などによる損害ということかとも考えました。

    2つ目
    <受託者の責に帰すべき事由>の負担は第11条(損害賠償)で明記されている内容が有効なのでしょうか?それとも別で契約しておく必要があるのでしょうか?

    以上です。お忙しいとは思いますが、よろしければご回答おねがいいたします。

    • 藤澤昌隆 藤澤昌隆 より:

      エックス様、コメントありがとうございます。

      1つ目のご質問ですが、この条項はどちらの責任ともいえないですよねといった場面が生じた場合に、どちらが生じた損害の負担を負うかを定めるものです。

      想定される場面としては、例えば想定外の台風や地震などの災害で納入後に成果物が壊れてしまったような場合です。

      この場合、壊れてしまったことについてはどちらの責任ともいい難い状況ですが、受託者の立場としては納入後のトラブルは委託者の責任で代金はちゃんと払ってくださいね、再納入もしませんよということです。

      逆に条項例では納入前であれば受託者的にどうしようもない事由による成果物の滅失であっても、委託者の責に帰すべき事由によらない場合は、受託者は債務の履行義務を免れません。受託者側のエックスさんの立場としては危険負担の移転時期はなるべく早く(納入時等)設定しておくのが有利です。

      もともと欠陥があって単に納入後に欠陥が判明した場合は、契約不適合の問題になります。

      2つ目のご質問については、受託者の責に帰すべき事由がある場合は、債務不履行などの問題になるのでご指摘の通り損害賠償の条項が適用されることになります。別で契約しておく必要はありません。

  4. アバター M より:

    初めまして!Youtube拝見させてもらいこちらにたどり着きました!
    とても分かりやすく参考になります!
    現在アイリスト(美容)の業務委託として働いておりまして契約書をお店側と協議しながら作成しているんですが、気になる点がありましてお伺い出来たらと思いコメントさせて頂きました!

    お店側から提示された契約書の禁止事項欄に

    《甲が運営するサロン内の顧客をサロン以外での施術を禁止する。(契約解除後でも該当する)発覚時は1人あたり30万円の損害金及び裁判費用を負担する。》
    と記載されてるのですが
    この30万円の損害金だったり裁判費用の負担はこちらに不利しかない様に思い通常このような裁判費用まで押し付けてくることはあるのでしょうか?裁判費用をこちらが負担する必要はあるのでしょか?

    今後いつになるか分からないですが私は独立開業意思があります。(お店にはその事伝えています)
    もし現サロン近辺で開業した場合サロン顧客を引き抜きをせずともこちらにご来店される場合があると思うんですがお客様の意思でご来店された場合でもこの契約内容であれば違反という事になりますよね?
    ここに納得がいっておらず、ただ納得出来る訂正の仕方も分からないのでアドバイスがありましたらよろしくお願いいたします!

    • 藤澤昌隆 藤澤昌隆 より:

      M様、コメントありがとうございます。

      >この30万円の損害金だったり裁判費用の負担はこちらに不利しかない様に思い通常このような裁判費用まで押し付けてくることはあるのでしょうか?裁判費用をこちらが負担する必要はあるのでしょか?

      ここでいう裁判費用というのは、契約書作成者の意図としては弁護士費用を意図しているのではないかと考えられますが、弁護士費用を負担する旨の定めが契約書にある場合は損害賠償義務を負う場合には弁護士費用相当額を負担する必要があります(金額は裁判官によって判断が分かれます。)。

      裁判費用という表現が分かりづらい印象は受けますが、弁護士費用の負担に関する定めを設けること自体は有効ですし珍しくはありません。

      >もし現サロン近辺で開業した場合サロン顧客を引き抜きをせずともこちらにご来店される場合があると思うんですがお客様の意思でご来店された場合で>もこの契約内容であれば違反という事になりますよね?
      >ここに納得がいっておらず、ただ納得出来る訂正の仕方も分からないのでアドバイスがありましたらよろしくお願いいたします!

      ご指摘のとおり、問題の条項は施術行為自体が禁止されているように読め、文字通り読めば違反になりそうです。

      納得ができないなら条項そのものの削除を求めるか、例えば「甲の顧客情報を使用し、甲が運営するサロン内の顧客に対しサロン以外での施術を受けるよう働きかけることを禁止する。」といったように修正できれば、M様から当該顧客に対する営業行為を行わずに、自らの意思で独立後のМ様の店舗に来店された顧客に対する施術に対する懸念は排除できるかと思います。

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