ひな形

コンサルティング契約書のひな形(印紙・源泉徴収についても解説、無料)

コンサルティング契約書のひな形

「クライアントとコンサルティング契約を締結することになった。」という独立コンサルタントの方のために、コンサルティング契約書のひな形を用意しました。無料です。

コンサルティング契約書のひな形取扱いの注意点

本ひな形を使用する場合、以下の点にご注意ください。

  • 業務内容が準委任であることをベースとしたひな形となっています。請負の要素が含まれる場合は、必要な条項の追加や条項の内容の調整が必要です。なるべく専門家にご相談ください。
  • 赤字部分は解説です。使用する際は削除してください。
  • ご使用は自己責任でお願いします。

コンサルティング契約書のひな形

 

コンサルティング契約書

 株式会社〇〇(以下「委託者」という。)と△△(以下「受託者」という。)は、委託者が受託者に委託するコンサルティング業務について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的)
委託者は、以下に定められたコンサルティング業務(以下「本件業務」という。)を、受託者に委託し、受託者はこれを受託する。
(1)~~~~~~
(2)~~~~~~

【具体的なコンサル業務の内容を定める条項です。「~~に関する助言、支援」、「月1回のミーティング」等が定められることが多いです。】

第2条(報酬)
委託者は、受託者に対し、本件業務に関する対価として、毎月末日払いで、月額〇〇万円(税抜)を、受託者の指定する口座に振込送金するものとする。なお、振込手数料は委託者の負担とする。

【報酬について定める条項です。月額報酬の場合を想定して定めています。歩合報酬であったり、別途日当や追加報酬が発生する場合は調整してください。】

第3条(費用)
本件業務の実施に要する費用は、委託者受託者間で別途合意するものを除き、第2条の報酬に含まれる。

【交通費などの実費を別途請求することがあり得る場合は、交通費等の実費については、委託者負担とする旨に修正してください。】

第4条(報告)
委託者は、本件業務の実施状況について、受託者に対し、いつでも報告を求めることができるものとする。

【民法645条(656条)の報告義務を確認的に定めた条項です。】

第5条(秘密保持)
受託者は、委託者の承諾なくして、本契約に関連して委託者から開示された営業上または技術上の秘密情報(秘密である旨を明示されたものに限る。以下「秘密情報」という。)を第三者に対して開示、漏えいしてはならない。ただし、以下のいずれかに該当する情報は秘密情報には含まれない。
(1)開示された時点において、すでに公知であった情報
(2)開示された後に受託者の責任によらないで公知になった情報
(3)開示された時点において、受託者が既に了知していた情報
(4)正当な権限を有する第三者から、受託者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報
2.受託者は、委託者から開示された秘密情報を、本契約の目的以外のために使用してはならない。

【秘密保持について定めた条項です。コンサルタントは営業秘密を扱うことが多いので、別途秘密保持契約の締結を求められる場合があります。その場合は秘密保持契約書のひな形等の記事もご参照ください。】

秘密保持契約書のひな形
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第6条(再委託の禁止)
受託者は、本件業務の全部または一部を第三者に委託してはならない。

【コンサルティング契約は基本的には当該コンサルタントの属性に着目した契約ですので、委託者の承諾等がなければ再委託はできません(民法644条の2(656条))。再委託をできるようにするには、再委託ができる旨修正が必要です。】

第7条(反社会的勢力の排除)
委託者及び受託者は、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2.委託者及び受託者は、相手方が次の各号のいずれかに該当する場合、ただちに本契約を解除することができ、解除により相手方に損害が生じてもこれを賠償することを要しない。
(1)相手方または相手方の役員が反社会的勢力に該当すると認められるとき
(2)相手方の経営に反社会的勢力が実質的に関与していると認められるとき
(3)相手方が反社会的勢力を利用していると認められるとき
(4)相手方が反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき
(5)相手方または相手方の役員もしくは相手方の経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき
(6)自らまたは第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的な言動、暴力および風説の流布・偽計・威力を用いた信用毀損・業務妨害その他これらに準ずる行為に及んだとき
3.委託者及び受託者は、自己が前項各号に該当したため相手方が本契約を解除した場合、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

第8条(解除)
委託者及び受託者は、相手方が本契約に違反したときは、相当の期間を定めた催告をし、催告期間が終了しても違反が是正されない場合、本契約を解除できるものとする。
2.委託者及び受託者は、相手方に次の各号いずれかに該当する事由が生じたときは、何らの催告を要することなく、直ちに本契約を解除することができる。
(1)本契約の違反が重大なとき
(2)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の申立てがあったとき
(3)差押え、仮差押え等の強制執行、または公租公課の滞納処分を受けたとき
(4)支払停止、または支払い不能に陥ったとき、若しくは手形が不渡となったとき
3.前二項の定めにより本契約が解除された場合でも、解除権を行使した当事者は損害賠償の請求を妨げられない。

第9条(譲渡禁止)
委託者及び受託者は、あらかじめ書面により相手方の承諾を得なければ、本契約上の権利義務または本契約上の地位を、第三者に譲渡、移転その他の方法により処分してはならない。

第10条(有効期間)
本契約の有効期間は202〇年〇月〇日から202△年△月△日までの1年間とする。ただし、期間満了1か月前までに、委託者受託者いずれからも本契約を終了する旨の通知がない場合、1年間同一の条件で更新されるものとし、以後も同様とする。
2.前項にかかわらず、委託者及び受託者は1か月前に相手方に通知することにより、本契約を中途解約することができる。また、委託者は1か月分の報酬を支払うことにより直ちに本契約を中途解約することができる。
3.第5条(秘密保持)、第9条(譲渡禁止)及び第11条(専属的合意管轄)の規定は、本契約終了後も有効に存続する。

第11条(専属的合意管轄)
本契約に関する一切の紛争については、〇〇地方裁判所をもって第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

本契約の証として本書2通を作成し、委託者受託者記名押印の上、各自1通を保有する。

202〇年  月  日

(委託者)

(受託者)

その他検討すべき条項

その他検討すべき条項について

業務の履行方法に関する条項

コンサルタントはクライアント企業に赴いて業務を履行することが多いと思います。

もっとも、最近はZoom等によるWEB会議を中心にコンサルティングを行う事例も増えています。また、Zoom等で行うことを理由に報酬を安くしているケースもあるでしょう。

そのため、WEB会議等で業務を行うことが想定されている場合は、業務の履行方法としてはWEB会議等で行う旨を定め、クライアントの要望により会社に訪問する場合は別途日当が発生する等の手当をしておくのが望ましいです。

著作権に関する条項

コンサルタントが作成した報告書等に著作権が発生する場合があるため、著作権に関する条項を定めることがあります。著作権は著作者に帰属するのが原則である一方、クライアント側は著作権の譲渡を希望することが多いので、あえてこちらから提示するドラフトには条項を定めておかないということが考えられます。

クライアント側から提示された契約書には著作権に関する条項がないかチェックが必要です。

競業避止義務に関する条項

著作権同様、どちらかというとクライアント側が意識する条項として、競業避止義務の条項があります。

例えば、飲食店経営者が、飲食業のコンサルタントになるような場合、契約書に競業避止義務条項があると、飲食業を経営できなくなるリスクを負います。

コンサルタント側としては、自身の業務に影響がでるような競業避止義務等の条項が契約書にないかチェックが必要です。

印紙、源泉徴収について

印紙は原則不要

コンサルティング契約書は多くの場合、準委任契約書になるので課税文書には該当せず、印紙は貼付は不要です。

契約内容に請負の要素が入ると課税文書になり得るので、個別の検討が必要になります。

準委任契約、請負契約、違い
準委任契約と請負契約の違い、区別の基準ある契約が、準委任契約か請負契約であるかは、しばしば訴訟で争われたり、印紙税との関係で国税局や税務署からの指摘を受けたりして問題になるこ...

経営コンサルタントの場合は源泉徴収が必要

コンサルタントが個人で契約をする場合は、報酬が源泉徴収の対象とならないか検討する必要があります。

源泉徴収の対象となる報酬については、所得税法204条、所得税法施行令320条が定めています。そして、施行令320条2項は「企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含む。)」の業務に関する報酬を源泉徴収の対象としています。

「企業診断員」について、国税庁の通達は「直接企業の求めに応じ、その企業の状況について調査及び診断を行い、又は企業経営の改善及び向上のための指導を行う者、例えば、経営士、経営コンサルタント、労務管理士等と称するような者も含まれる。」としています。

そのため、いわゆる経営コンサルタントの業務に関する報酬は源泉徴収の対象となります。

経営コンサルタントでない場合は、源泉の対象と判断されることがないよう、契約書や請求書上も「経営に関する助言、指導」等といった誤解を生む表現を避けるべきです。

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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属) 基本情報技術者

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