「秘密保持契約書を作成することになった。」
「秘密保持契約書のひな形、書式を見たい。」
という契約書担当者の方のために、秘密保持契約書のひな形、書式を用意しました。
秘密保持契約書のひな形取扱いの注意点
本ひな形を使用する場合、以下の点にご注意ください。
- 秘密保持契約書の内容は、締結目的によって必要な条項の追加や条項の内容の調整が必要です。なるべく専門家にご相談ください。
- ひな形はなるべく中立的に作成してあります。
- 赤字部分は解説です。使用する際は削除してください。
- ご使用は自己責任でお願いします。
秘密保持契約書のひな形、書式
秘密保持契約書
○○(以下「甲」という。)と△△(以下「乙」という。)は、□□□□にあたり(以下「本目的」という。)、相互に開示される秘密情報の取扱いについて、以下の通り秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。
【前文です。□□□□の部分には、秘密保持契約を締結する目的を記載します。目的外利用の禁止のところで重要になってきますので、目的は正確に定めてください。単独の目的条項を作成することもあります。】
第1条(秘密情報)
本契約において、秘密情報とは、一方当事者(以下秘密情報を開示する側を「開示当事者」という。)が他方当事者(以下秘密情報を受領する側を「受領当事者」という。)に対して、本目的のために、開示の方法及び媒体を問わず、秘密情報である旨を明示して開示した一切の情報をいう。ただし、以下のいずれかに該当する情報は秘密情報には含まれない。
①開示された時点において、既に公知であった情報
②開示された後に受領当事者の責任によらないで公知になった情報
③開示された時点において、受領当事者が既に了知していた情報
④正当な権限を有する第三者から、受領当事者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報
【何が秘密情報にあたるか定義する条項です。秘密情報の範囲は、情報受領者としてはなるべく厳格に、情報提供者としてはなるべく広く定義します。】
第2条(秘密保持)
受領当事者は、秘密情報について秘密を保持するものとし、開示当事者の事前の書面による承諾なしに第三者に対して秘密情報を開示または漏洩してはならない。
2.受領当事者は、前項の規定に基づき第三者に対し秘密情報の開示をする場合は、本契約に定める秘密保持義務と同等の秘密保持義務を当該第三者に課して、その義務を遵守させるものとし、当該第三者においてその義務違反があった場合には、受領当事者による違反として、開示当事者に対して責任を負う。
3.第1項の規定にかかわらず、受領当事者は、法令または裁判所、監督官庁、その他受領当事者を規制する権限を有する公的機関の裁判、規則もしくは命令にしたがい必要な範囲において秘密情報を開示することができる。ただし、受領当事者は、かかる開示を行った場合は、その旨を直ちに開示当事者に対して通知する。
【秘密保持義務を定める条項です。例外などもここで定めます。例外としては、開示当事者の書面による承諾を得た場合、法令に基づく開示の場合、弁護士などの外部専門家・グループ企業の関連会社などに開示する場合を定める例が多いです。】
第3条(目的外使用の禁止)
受領当事者は、開示当事者から開示された秘密情報を、本目的以外のために使用してはならない。
第4条(複製)
受領当事者は、本目的のために必要な範囲で秘密情報を複製することができる。
2.受領当事者は、前項の複製により生じた情報についても秘密情報として取り扱うものとし、本契約に基づく義務を負う。
第5条(返還または破棄)
受領当事者は、本契約が終了した場合または開示当事者の請求がある場合は、複製を含む秘密情報を構成する一切の資料を直ちに開示当事者に返還し、返還が困難な場合は直ちに破棄する。
2.受領当事者は、前項に基づく義務が履行されたことを証明する書面を開示当事者に提出する。
第6条(権利義務の譲渡等の禁止)
甲及び乙は、あらかじめ書面により相手方の承諾を得なければ、本契約上の権利義務または本契約上の地位を、第三者に譲渡、移転その他の方法により処分してはならない。
第7条(責任及び損害賠償)
本契約に違反した当事者は、相手方が必要と認める措置を直ちに講ずるとともに、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。
第8条(有効期間)
本契約は、本契約締結日から1年間有効とし、その後は、期間満了1ヶ月前までに、甲または乙から相手方に通知がない限り、1年ごとの期間について自動更新される。
2.第2条(秘密保持)、第5条(返還または破棄)、第7条(責任及び損害賠償)、第9条(合意管轄)の規定は、本契約終了後も有効に存続する。
【有効期間は自動更新としないものも多くあります。】
第9条(合意管轄)
本契約に関する一切の紛争は、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
【裁判になった場合にどの裁判所を利用するかを定める合意です。なるべく自社に有利になるようにしておきましょう。】
第10条(協議事項)
本契約に定めのない事項、または本契約の解釈について疑義を生じたときは、甲乙誠実に協議のうえ解決する。
本契約の締結を証するため、本書を2通作成し、甲乙記名押印の上、それぞれ1通を保有する。
20 年 月 日
(甲)
(乙)
その他秘密保持契約で検討すべき条項
上記のひな形に記載があるもののほかでは、以下のような条項を検討します。
- 知的財産権に関する条項
- 準拠法に関する条項
- 秘密情報の管理体制に関する条項
- 反社会的勢力排除に関する条項
- 他の契約との優先関係に関する条項
- 差止めに関する条項
【外部サイト提供記事】
秘密保持契約書と本契約書は、両方作成し他方がよいのでしょうか?
既にメールにてやり取りをして依頼の合意は取れており、ある程度の情報は既に開示済みです。
また、本契約もすぐに製作して行う予定ですが、その場合でも別途秘密保持契約も取り交わしたほうがよいのでしょうか?
お忙しい中、よろしくお願いいたします。
山田様、コメントありがとうございます。
>秘密保持契約書と本契約書は、両方作成し他方がよいのでしょうか?
これはケースバイケースです。秘密保持契約書と本契約書をそれぞれ作成するケースもあれば、本契約書に簡易な秘密保持条項を設けてそれですませる場合もあります。
秘密保持契約書は、本契約の締結を検討するにあたって作成することが多いのですが、既に本契約が決定されている場合に別途秘密保持契約書を締結するかは、どれだけ秘密保持について詳細に定めたいかによります。自社が開示側の場合は、秘密保持契約書も別途作成しておいた方が相手方の秘密保持への意識を高める実質的効果もあるかと思います。
>既にメールにてやり取りをして依頼の合意は取れており、ある程度の情報は既に開示済みです。
既に開示済みの情報についても、秘密保持や目的外利用の禁止を確保して、秘密情報の取扱いなどについても詳細に定めておきたい場合は、情報開示日までさかのぼって適用される内容にした秘密保持契約書を本契約書とは別途作成しておくことが考えられます。
わかりました。ご丁寧にありがとうございます。
やはり、過去に定時していある内容に対しても、もし今後本契約がなんからの問題で覆った場合も含めてを考えると、別々に行っていたほうがよさそうだと思います。
ありがとうございました。
別の質問になりますが、契約書の下の方にトラブル解決のために○○裁判所の記載がありますが、この裁判所はなにを基準に裁判所を選んだら(記載)よいのでしょうか?
近くの裁判所か、特定の案件に強い・扱っている裁判所などがあり、それを記載するのでしょうか? その裁判所にには事前にアポイントメントなどをとりつけて確認をした後でないと記載が出来ないことなっているのでしょうか?
こちらもよろしくお願いいたします。
>契約書の下の方にトラブル解決のために○○裁判所の記載がありますが、この裁判所はなにを基準に裁判所を選んだら(記載)よいのでしょうか?
原則として自社の近場の裁判所を選択すればよいです。
○○(自社)の本店所在地を管轄する地方裁判所を専属的合意管轄とするという条項にしておけば、本店の近場の地方裁判所にすることができるので、間違いないのはこの定め方です。
他には、大阪と東京の会社で契約を締結する場合に、間をとって名古屋地裁を合意管轄とすることも可能です。
>その裁判所にには事前にアポイントメントなどをとりつけて確認をした後でないと記載が出来ないことなっているのでしょうか?
アポイント等は不要です。近くの裁判所でなくてもかまいません。
承知しました、特に定めがないのであれば、近くの裁判所で構わないとのことなので、そのように記載して先方と相談をしてみます。
こちらもあわせて、ご丁寧にご説明いただきましてありがとうございました。
お世話になります。
秘密保持契約書において、「収入印紙」は必要になりますか、
期間の定め無しです。
7号文章なるものに該当するかご教授ください。
kate様、コメントありがとうございます。
このひな形のような一般的な秘密保持契約書であれば、課税文書にあたらず印紙は不要です。7号文書にも該当しません。