この記事では、電子契約導入のメリット、デメリットについて弁護士が解説しています。
そもそも電子契約とは
そもそも電子契約とは何かについて解説します。
電子契約の定義
電子契約について法律上の確立した定義はありませんが、一般的には電子契約は次のような意味で定義されることが多いです。
契約内容が記録された電子ファイルを、インターネット上で取り交わし、電子署名を付することで契約締結を行う契約方式
ポイントとなるのは、電子ファイル、インターネット、電子署名という要素です。
電子署名とは
電子契約になじみがない人に聞きなれない用語として「電子署名」があります。
紙の契約書は、契約当事者本人が作成したことを担保するために、本人の署名や記名押印がなされます。
この署名、記名押印に代わるデジタル技術が電子署名です。
電子契約導入のメリット
電子契約導入のメリットについて解説します。
印紙税が課税されない
電子契約の場合、印紙税が課税されないので、紙の契約書だと通常かかるような印紙税を削減できます。
取引基本契約書などでは1通4000円の印紙税が課せられることもあり、頻繁に契約書を取り交わす企業にとって印紙税のコストは大きな負担でした。
印紙税が課税されないことは電子契約を導入する大きいメリットの一つです。
郵送料、印刷代といった事務コストの削減ができる
紙の契約書を取り交わす場合は、契約書を印刷して、署名または記名押印のために双方の立会いが必要になったり、契約書を郵送でやり取りする必要があります。
電子契約を導入すれば、基本的にインターネット上で契約が完結するので事務コストの削減が可能です。
契約締結までのスピードが速まる
紙の契約書では、印刷や製本をした上で、署名や押印のための契約時の立会いや郵送での取り交わしに日数がかかりますが、電子契約ではそのようなプロセスを省略できるので契約締結までのスピードが速まります。
原本管理の利便性、安全性が高まる
紙の契約書だと原本(紙)を保管しなければなりませんが、電子契約であれば電子データとして保管ができます(※)。
契約書のデータ化により、保管や検索など管理上の利便性が高まります。
また、紙の契約書は紛失や天災などに消失、経年劣化がありえますが、電子データではクラウド等の適切利用によりリスクを減らすことができます。
※電子帳簿保存法上の基準を満たす必要あり
コンプライアンスの向上に役立つ
紙の契約書の場合、契約書の保管先が散逸したりして、チェックをしたいときなどに検索性に乏しいことがあります。
経営陣が交代しているような場合は、契約相手から指摘されて「こんな契約書があったなんて、、、」と現経営陣が初めて認識することもあります。
電子契約を利用し、契約書が電子データで保管されるようになれば、一元的な管理が可能になり、内部監査や契約状況のチェック等、コンプライアンスの向上に役立ちます。
電子契約導入のデメリット
電子契約のメリットについて述べてきましたが、もちろんデメリットもあります。
導入のデメリットについて解説します。
導入にあたって社内調整が必要
内部統制がしっかりしている中堅以上の企業では、契約の締結、契約書の保管等については、多くの部署や社内規程がかかわっています。
電子契約の導入にあたっては、総務部、営業部、法務部、システム部門といった部署間の調整や社内規程の整備など、社内調整が必要になります。
電子契約サービスの導入、維持コストがかかる
電子契約サービスの導入にあたって、電子契約サービスの利用月額や契約書の数毎の料金が発生します。
多くの電子契約サービスでは導入自体のイニシャルコストはかかりませんが、社内システム等との連携にあたっては費用が必要になる場合があります。
もともと自社の契約書が秘密保持契約書や準委任契約書のような印紙税が課税されない契約書のやり取りだけですとコスト的なメリットが乏しいこともありえるでしょう。
社員の教育費用やIT人材の登用等も必要になることもあり、導入初期のうちはかえってコストがかかることもありえます。
電子化できない契約書がある
法律上、書面で取り交わさないと効力が発生しない契約書や、契約にあたって書面の交付義務がある書類があります。
電子化ができない契約書に関しては電子契約を利用することはできません。
- 土地建物の定期賃貸借契約(借地借家法22条及び38条1項)
- 宅地建物の重要事項説明書(宅建業法35条)
- 特定商取引法上の法定書面
作成日のバックデートができない
契約書のバックデート自体望ましいことではないので、デメリットとして挙げるのはあまり適切ではありませんが、電子契約では作成日のバックデートはできません。
もっとも、紙の契約書でもバックデート自体が必要な場面というのはあまり多くなく、効力発生日自体を遡らせる条項を入れておけば十分なことがほとんどです。
コンプライアンス的にはむしろ望ましいことでしょう。
契約している電子契約サービスが終了するリスクがある
電子契約サービスは民間企業が運営しているので、契約している電子契約サービスが運営会社の倒産や事業縮小などにより終了してしまうおそれがあります。
この場合、サービス提供会者のクラウドに保存されている電子データや電子署名やタイムスタンプの有効期間の更新の面で不都合が生じることがありえます。
電子契約は積極的に導入すべき
電子契約のメリット・デメリットをまとめます。
メリット | デメリット |
印紙税が課税されない | 導入にあたって社内調整が必要 |
郵送料、印刷代といった事務コストの削減ができる。 | 電子契約サービスの導入、維持コストがかかる |
契約締結までのスピードが速まる | 電子化できない契約書がある |
原本管理の利便性、安全性が高まる | 作成日のバックデートができない |
コンプライアンスの向上に役立つ | 契約している電子契約サービスが終了するリスクがある |
電子契約の主なメリットは、印紙税や事務コストの削減、利便性向上・スピードアップです。
対して、主なデメリットは、導入初期の社内・社外の調整だと考えられます。逆にそれほど社内システムが確立していない企業の方が導入の障害は少ないといえます。
電子契約の普及の流れはもはや止めようがないので、基本的にはすべての企業が電子契約を導入すべきです。
主な電子契約サービス
現在普及している主な電子契約サービスを紹介します。
GMO電子印鑑Agree
画像引用:GMO電子印鑑Agree公式サイト
GMO電子印鑑AgreeはGMOインターネットグループのGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社(東証一部)が運営する電子契約サービスです。
GMO電子印鑑Agreeのおすすめポイントはこちらです。
GMO電子印鑑Agreeのおすすめポイント
- ITインフラ大手企業運営なのでサービス継続性に期待できる
- 当事者型の電子署名と立会人型の電子サイン、2つの署名に対応
- 電子認証局をグループで保有
- 基幹システムとの連携が可能
クラウドサイン
画像引用:クラウドサイン公式サイト
クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社(東証マザーズ)が運営する電子契約サービスです。
2020年7月末日時点で導入企業数10万社とシェアが高いのが魅力の一つです
クラウドサインのおすすめポイントはこちらです。
クラウドサインのおすすめポイント
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