IT、WEBサービスに関する契約書

システム開発におけるラボ契約とは

ラボ契約

この記事ではシステム開発におけるラボ契約について、弁護士が解説をしています。

ラボ契約はオフショア開発においてみられる契約形態

ラボ契約は、主にオフショア開発(システム開発を海外企業に委託する開発形態)においてみられる契約形態です。

ラボ契約は、契約期間中に発注者が一定工数以上の発注をすることを条件として、受託者が一定のスキルを持ったエンジニアを一定数利用できるように確保しておく契約形態です。

契約の取り交わし方としては、委託者と受託者間で基本契約となるラボ契約を締結し、当該基本契約に基づき個別契約を締結(個別の受発注)をすることが行われています。

  • ラボ契約の受託者側は、一定のスキルを持ったエンジニアを一定数確保しておく
  • ラボ契約の委託者側は、契約期間中一定工数以上を発注することを条件に、一定数のエンジニアを受託者に確保してもらえる
  • 委託者は、最低発注数を下回る場合も最低発注数分の費用を支払う必要がある

ラボ契約において重要なブリッジエンジニアとは

ラボ契約では、委託者と海外エンジニアとの橋渡し役となるブリッジエンジニア(SE)の存在が重要になります。

ブリッジエンジニアは、委託者側の要望を現地の言語で現地のエンジニアに伝える橋渡し役を担います。

多くのケースでは、現地の日本語堪能なエンジニアがブリッジエンジニアとなりますが、日本から現地へエンジニアが派遣されるケースや日本駐在のエンジニアがブリッジエンジニアとなるケースもああります。

ブリッジエンジニアは、現地エンジニアと日本の委託者との橋(ブリッジ)渡し役となるエンジニア

ラボ契約のメリット・デメリット

ラボ契約のメリット・デメリットについて解説します。

委託者側のメリット・デメリット

ラボ契約における委託者側のメリット・デメリットは以下のとおりです。

委託者側のメリット

ラボ契約における委託者側のメリットとしては、海外の安い人件費の活用によるコスト削減が第一に挙げられます。

一定の品質のエンジニアを一定数確保できるのもメリットです。

また、ラボ契約はアジャイル開発との親和性が高く、開発途中での仕様変更等柔軟な開発が可能になります。

その他としては、同じ受託者のエンジニアチームを使用し続けることで学習効果、ノウハウの蓄積が期待できるなどともいわれています。

メリット
  • コストを削減できる(オフショア開発の場合)
  • 契約期間中エンジニアを確保できる
  • 柔軟な開発が可能になる
  • 学習効果、ノウハウの蓄積が期待できる。

委託者側のデメリット

ラボ契約における委託者側のデメリットは以下のとおりです。

ラボ契約では、最低でも最低発注工数相当の費用がかかるので、契約期間中エンジニアを稼働させていなくても費用がかかることになります。

また、個別契約の内容にもよりますが、ラボ契約ではエンジニアの確保とエンジニアによる役務提供が受託者側の主な債務の内容となるので、システムの完成責任は委託者が負うのが原則です。

この場合、仮にシステムの開発が失敗に終わっても、受託者がシステムの完成責任を負う請負契約と異なり委託者は報酬を支払う必要があります。

デメリット
  • エンジニアが稼働していなくても費用がかかる
  • システムの完成が必ずしも保証されない

受託者側のメリット・デメリット

ラボ契約における委託者側のメリット・デメリットは以下のとおりです。

受託者側のメリット

受託者側のメリットとしては、委託者からの一定の発注工数が確約されるので、安定した収入を確保できることが挙げられます。

また、委託者のデメリットの裏返しで、原則システムの完成責任を負わないというのもメリットの一つです。

仕様変更等柔軟な開発が可能なことは、受託者にとってもメリットになります。

メリット
  • 安定した収入を確保できる
  • 原則としてシステムの完成責任を負わない
  • 柔軟な開発が可能になる

受託者側のデメリット

ラボ契約における受託者側のデメリットは以下のとおりです。

ラボ契約は、委託者によるエンジニアの雇用リスクを受託者側に転嫁する側面があり、受託者側はエンジニアの雇用リスクを負います。

また、オフショア開発のラボ契約では、日本法人が委託者であるクライアントとラボ契約をした上で、現地法人に再委託をすることになります。そのため、契約関係が複雑になったり、国際取引上のリスクを負うことになります。

デメリット
  • エンジニアの雇用リスクを負う
  • 契約関係が複雑になる

国内開発におけるラボ契約と問題点

ラボ契約は、主にオフショア開発で用いられる契約の形態で、国内開発ではあまり用いられていません。

これは日本のエンジニアの人月単価が高く、国内開発をラボ契約で行おうとすると通常の請負契約よりもかえってコストが高くなりがちという問題があるためと考えられます。

また、エンジニアを確保するという意味では似た機能を持つSES契約同様、委託者と開発を担当するエンジニアの指揮命令関係が生じないように注意しておかないと偽装請負と評価されるリスクがあります。

SES契約

System Engineering Service契約の略。受託者が委託者に対し、一定のスキルを持ったエンジニアによる一定期間の役務提供をし、それに対し委託者が受託者に委託料を支払う契約。仕事の完成を目的することではなく、役務提供が債務となり、準委任契約とされる。

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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属) 基本情報技術者

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