IT、WEBサービスに関する契約書

ウェブサイト制作業務委託契約書での著作権条項の定め方

ウェブサイト制作業務委託契約書での著作権条項の定め方

この記事では、ウェブ制作会社向けにウェブサイト(ホームページ)制作業務委託契約書での著作権条項の定め方について、弁護士が解説しています。

ウェブサイトの著作権とは

ウェブサイトは、HTML、CSS、PHP、JavaScript等のマークアップ言語・プログラミングのほか、テキスト、写真、イラスト、音声、音楽、動画等、様々なコンテンツで構成されています。

これらのコンテンツが、著作権法上の著作物に該当する場合は、制作者(クリエイター)にコンテンツに対する著作権が発生します。

どのようなコンテンツが著作権法上の著作物になるのですか?
著作権法2条1項1号では、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されています。

著作権が認められるコンテンツは、著作権者の許諾なく複製・改変したり、公開したりすると著作権侵害になってしまいます。

もっとも、HTMLのソースコード等は、誰が作ってもある程度似たような表記になりやすく、「思想又は感情を創作的に表現したもの」とはいえず、著作権法上の著作物にはならないことが多いと考えられます(知財高判平成29年3月14日)。

HTMLの著作権が争われた事例(知財高判平成29年3月14日)

高裁は、「プログラムの著作物性が認められるためには、指令の表現自体、同表現の組合せ、同表現の順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり、かつ、それがありふれた表現ではなく、作成者の個性が表れているものであることを要するということができる。プログラムの表現に選択の余地がないか、あるいは、選択の幅が著しく狭い場合には、作成者の個性の表れる余地がなくなり、著作物性は認められなくなる。」として、問題となったHTMLの著作物性につき否定した。

ウェブサイトのコンテンツの著作権は誰のもの?

著作権は、著作物となるコンテンツを制作した人に権利が認められます。

ウェブサイト制作業務委託契約では、受託側であるウェブ制作会社に原則として著作物の著作権が認められます。

ウェブ制作会社の従業員が制作したコンテンツの著作権はどうなりますか?
従業員が職務上制作したコンテンツの著作権は会社に帰属します。

委託者側としては、お金を払っている以上当然に自分側に著作権が移転されるものと期待していることが多いですが、法律の原則はウェブ制作会社に著作権が残ります。

ウェブ制作会社としては、汎用性の高いコンテンツについては、一部を別の案件でも使うことが想定されるので、著作権に関するトラブルを避けるためにもコンテンツの著作権は自社に残しておきたいところです。

ブログ記事の盗用には要注意

ウェブ制作会社が、ウェブサイトの制作に加えて集客なども積極的にコンサルティングする場合、コンテンツSEO対策として、ブログ記事などをウェブ制作会社の方で作成してウェブサイトに投稿することがあります。

この場合、記事は外部のライターに外注するか、自社の従業員に書かせるかということになりますが、外注先や従業員が作成した記事が他のブログ記事からの盗作だったというケースが稀にあります。

著作権侵害が発覚した場合、ウェブサイトを公開しているお客さんに対して、権利者から削除請求や損害賠償請求がなされることになります。この場合、ウェブ制作会社側にも損害賠償責任が発生してしまいます。何より信用に対するダメージがはかりしえません。

そのため、記事をウェブ制作会社側で用意する場合は、記事制作担当者に対して盗用したり、盗用を疑われないよう十分注意喚起をしておくことが必要です。

著作権はウェブ制作会社に残して、利用許諾をするのが基本

制作物の著作権については、ウェブ制作会社に帰属するのが法律の原則であることを説明しました。

契約書においても、基本的には著作権はウェブ制作会社に残しておきつつ、コンテンツの利用を目的の範囲内で許諾するという内容にしておくべきです。

あるお客さん専用の特別な仕様などにする場合は著作権の譲渡も考えられますが、著作権譲渡の対価を交渉するようにし、使いまわしが可能な汎用的なコンテンツの著作権は留保するようにしましょう。

  • コンテンツの著作権はウェブ制作会社に残しておく
  • クライアントには、コンテンツの利用許諾をする
  • 著作権を譲渡する場合は、著作権の対価を交渉する

ウェブサイト制作業務委託契約書の著作権の規定例

ウェブサイト制作業務委託契約書の著作権の規定例について解説します。

著作権を全面的に留保する規定例

第〇条(著作権等の帰属)

本契約に基づき受託者が制作した成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条所定の権利を含む。)を含む一切の知的財産権(以下「著作権等」という。)は、受託者に帰属する。ただし、第三者から提供されたデータ等に関する著作権等は、別段の合意がない限り当該第三者に帰属する。

2.受託者は、委託者が成果物をインターネット上に公開する目的で利用または改変することを許諾する。

3.委託者が成果物を前項の目的以外で利用または改変する場合には受託者の許可を得なければならない。

4.委託者は、受託者の文書による同意なしに成果物の利用権、改変権を第三者に譲渡、移転、またはその他の処分を行うことはできない。

汎用的な部分の著作権を留保し、残りを譲渡する規定例

第〇条(著作権等の帰属)

本契約に基づき受託者が制作した成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条所定の権利を含む。)を含む一切の知的財産権(以下「著作権等」という。)は、受託者が別のウェブサイト等に汎用的に利用が可能なプログラム、画像、音声、映像データの著作権を除き、本契約に基づく代金全額の支払いがなされた時に、受託者から委託者に移転する。ただし、第三者から提供されたデータ等に関する著作権等は、別段の合意がない限り当該第三者に帰属する。

2.受託者は、受託者に著作権等が留保された成果物について、委託者がインターネット上に公開する目的で利用または改変することを許諾する。

3.委託者が、受託者に著作権等が留保された成果物について、前項の目的以外で利用または改変する場合には受託者の許可を得なければならない。

4.委託者は、受託者の文書による同意なしに、受託者に著作権等が留保された成果物について、利用権、改変権を第三者に譲渡、移転、またはその他の処分を行うことはできない。

ABOUT ME
藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属) 基本情報技術者

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)