弁護士という仕事上、契約書のお問い合わせを受けることが多いですが、その中でよく聞かれるのが、
契約書のチェックや作成はどこに依頼できますか?
というものです。
新規サービスの立ち上げの際の契約書の作成や取引先から提示された契約書のチェックなどをどこに依頼すべきか迷っている人が多いようです。
この記事では、契約書のチェックや作成をどこに依頼すべきかについて弁護士が解説しています。
契約書の依頼は基本的には弁護士か行政書士
結論から言いますと契約書のチェック・作成の依頼ができるのは基本的には弁護士か行政書士のみです。
他にはAIなどのリーガルテックもありますが、記事タイトルのような質問をされるような方では契約書AIの導入は現実的ではありません。これは後ほど説明します。
契約書業務を弁護士に依頼するメリット・デメリット
弁護士は法律上、あらゆる法律事務を取り扱えます。そのため、多くの弁護士が契約書業務を扱っています。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に契約書業務を依頼する最大のメリットはその専門性の高さが資格によってある程度担保されてることです。
契約書は後日の紛争に備えて作成するものです。
この点、弁護士は司法試験や司法修習といった高いハードルを越えており、日常的に紛争業務を扱っているので、契約書の条項についても専門的な知見に基づくアドバイスが可能です。
また取り扱える法律事務の範囲に制限はないので、関連した法律相談やトラブルが発生した際の対応を引き続き依頼できます。
- 判例、法令に関する知識、調査能力がある程度担保されている
- 関連した法律相談が可能
- トラブルが生じた際も引き続き依頼ができる
弁護士に依頼するデメリット
契約書業務を弁護士に依頼するデメリットとしては、費用面と納期面が挙げられます。
弁護士の時間単価は士業の中でも高い方なので、費用はどうしても高くなりがちです。
また、一般的な街の弁護士はあらゆる法律事務を取り扱っているので、基本的に外出も多く多忙です。そのため、企業法務や契約書業務に特化している弁護士でないと納期は遅くなりがちでしょう。
- 費用が高くなることが多い
- 納期に日数がかかることが多い
弁護士に契約書チェック・作成を依頼する場合の相場
弁護士の費用は、定額制かタイムチャージ制がとられていることが多いです。
タイムチャージ制は実際にかかった時間を計測して、担当弁護士の時間単価にかかった時間をかけて料金を算定します。
依頼する弁護士がタイムチャージ制を採用している場合は、上限の有無と予想料金についてきちんと説明を受けておかないと想定より高額となる場合があるので注意が必要です。
定額制・タイムチャージ制いずれでも契約書チェック・作成の単価は概ね次のような範囲におさまると考えられますが、費用は契約書の分量や難易度によって変わってくるので、事前の見積が重要になってきます。
項目 | 費用 |
契約書チェック | 3~20万円程度 |
契約書作成 | 5~30万円程度 |
契約書業務を行政書士に依頼するメリット・デメリット
行政書士は、権利義務に関する書類(要するに契約書)を作成することができます(行政書士法第1条の2第1項)。
したがって、弁護士以外の者による法律事務の取扱いを禁止する弁護士法72条の例外として、行政書士は契約書業務を取り扱うことができます。
行政書士に依頼するメリット
行政書士に契約書業務を依頼するメリットとしてはその料金の安さを挙げることができます。
ネット検索などでみていると、契約書作成1通で1万円代から受けている行政書士事務所があります。弁護士ではまずありえない金額でしょう。
- 費用が安くなることが多い
行政書士に依頼するデメリット
行政書士に契約書業務を依頼するデメリットとしては、法令や裁判例に関する専門性が資格によっては担保されていないことが挙げられます。
契約書は後日の紛争に備えて作成するものですが、紛争自体の業務を行政書士は経験していない点に注意が必要です。
もちろん専門性が高い行政書士もいると思いますが、ある程度資格によって専門性が担保されている弁護士よりも依頼する行政書士は厳選が必要になります。
また、行政書士は弁護士法72条の例外として限定的に法律事務を取り扱うことができるにすぎないので、関連した法律相談やトラブル発生時の対応については依頼ができません。
- 資格によって法令や裁判例に専門性が担保されていない
- 関連した法律相談やトラブル発生時の対応について依頼できない
契約書AI導入は現実的か?
契約書チェックや作成のAI化が発展しています。
契約書AIは定型的な条項のチェックなどには役に立ちますが、まだまだ大手企業の法務部員や弁護士等の法務専門家の作業軽減レベルでの使用にとどまっています。
専門性についても、基本的には弁護士が監修しているので決して低くはないと思いますが、契約書AIサービスを提供している会社の中には「専門的法律知識に基づくものではない」などと説明しているところもあります。
費用も定額や従量課金で高額になりがちで、契約書の取扱い数が少ない中小企業等ではコストパフォーマンス的にも導入は現実的ではありません。
- 契約書AIは大企業の法務部員や弁護士向け
- あくまで専門家の作業を軽減させるもの
- 導入コストが高い
弁護士、行政書士、契約書AI比較表
弁護士、行政書士、契約書AIの比較表です。
弁護士 | 行政書士 | 契約書AI | |
契約書業務の専門性 | ◎ | △ | 〇 |
対応範囲 | 制限なし | 契約書業務のみ | 契約書類型の制限有 |
料金 | 高め | 安め | 月額また従量課金(高め) |
納期 | 契約次第 | 契約次第 | 即時または1営業日 |
依頼時のチェックポイント | 契約書業務を多数取り扱っているか、依頼する業界に詳しいか、料金と納期は明確か | 契約書業務に関する専門性は高いか | コストパフォーマンスが合うか、自社に適切な法務人材がいるか |