この記事では、ゼロから契約書を作成する方法について弁護士が解説をしています。
契約の権利義務の内容の確認
ほとんどの契約は、何か(物、サービス、権利)を提供する代わりにお金が支払われるということを定めます。
そのため、契約書を作成するにあたっては
- 何が提供され
- それに対しいくら支払われるのか
という基本的な権利義務の内容を確認することが先決となり、最も重要になります。
ここの認識の解像度が低いと後々トラブルが発生しやすくなります。
例えば、ウェブサイトを制作することに対し50万円を支払うというざっくりした内容でも契約は成立します。
しかし、これだけの合意内容だとどのようなウェブサイトを作る契約なのかわかりませんよね。
したがって、基本的な事項として以下の内容を定める必要が出てきます。
- ウェブサイトの仕様は?
- 制作の納期は?
- お金を払う時期や条件は?
契約の法的性質、タイトル決定、法令等のチェック
基本的な契約の権利義務関係が確認できれば、当該契約の法的性質も確認ができます。
ここでいう法的性質とは、売買契約、請負契約、準委任契約等のどのような契約類型に該当するかというものです。
法的性質が確定しないと、契約書のタイトルの決定、検討すべき一般条項の選定、法令チェックができませんので、まずはこれを確定させます。
契約の法的性質を確定させる
契約書のタイトルの付け方は基本的に自由
契約書のタイトルは基本的に自由につけてかまいません。
タイトルでは契約の法的性質は決まりませんので、タイトルが請負契約となっていても、その実質が準委任契約であれば、当該契約は準委任契約であると解釈されます。
法令等のチェックは早期に行う
取り交わそうとしている契約が、そもそも法的に無効になったり、罰則を受けるものであったことが後から判明してしまうと、これまでの努力が全て水の泡となってしまいます。
そのため、関連法令のチェックは契約交渉の早期に行っておくべきです。
また、取引上のお金の流れを正確に認識し、会計上の論点が発生しないかもあらかじめ検討しておく必要があります。
当該契約で特別に定めておきたい条項を検討する
契約を締結するにあたって、その契約特有の合意事項を定めたいということがあります。
例えば、ウェブサイトの制作契約なら、制作するにあたって委託者サイドの協力がある程度不可欠になってくるので、写真やテキストなどのウェブサイトの素材を提供する義務を委託者に課す条項を規定したりします。
これについては、各契約類型ごとにチェックポイントがあるので契約類型ごとに実務書等を確認します。
契約書の前文、一般条項を検討する
基本的な権利義務に関する条項が定まったら、各契約類型に即した前文、一般条項を検討していきます。
上記のウェブサイト制作業務委託契約のような請負契約であれば、以下のような一般条項が定められます。
- 代金の支払方法に関する条項
- 納品(納入)、検査(検収)に関する条項
- 契約不適合責任に関する条項
- 再委託に関する条項
- 権利義務の譲渡禁止に関する条項
- 知的財産権に関する条項
- 秘密保持に関する条項
- 解除に関する条項
- 反社会的勢力の排除に関する条項
- 損害賠償に関する条項
- 専属的合意管轄に関する条項
- 誠実協議に関する条項
一般条項については、各契約類型ごとのひな形を参考にしたり、本ブログ上でも解説しているので、ご参照ください。
締結方式を検討する
ここまできたら契約書はほぼ完成しています。
最後に契約締結の方式を検討します。
紙媒体に記名押印して取り交わす
最もオーソドックスな取り交わし方法は、紙媒体に記名押印して取り交わすものです。
契約書が複数枚に渡る場合は製本も必要になってきます。
契約類型によっては印紙税が課税される点に注意が必要です。
電子契約で取り交わす
最近増えてきた契約書の取り交わし方法として電子契約があります。
この方式で行う場合は、印紙税が課税されないというメリットがあります。