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フリーランスに業務を再委託する契約の注意点

フリーランスに業務を再委託する契約の注意点

この記事では、フリーランスに業務の一部や全部を再委託する場合の契約の注意点や契約書上の条項例について弁護士が解説しています。

業務の再委託と業務委託契約

例えばウェブサイト制作業務を請け負ったウェブ制作会社が、サイトの素材の作成やコーディングなどを外部のフリーランスに再委託する場合があります。

この場合は、ウェブ制作会社はフリーランスとの間で請負契約を締結することになり、業務委託契約書を作成することになります。

定期的に再委託があるような場合には、業務委託基本契約書を作成して、個別の発注書や受注書でやりとりをすることもあります。

再委託のための業務委託契約を締結する際の注意点

再委託のための業務委託契約を締結する際の注意点について解説します。

そもそも再委託が可能か?

フリーランスに業務を再委託する大前提として、クライアントとの契約で再委託が禁止されていないことを確認する必要があります。

民法の原則では、請負契約であれば再委託は原則自由ですが、準委任契約の場合はクライアントの承諾かやむを得ない事由が必要になります(民法644条の2)。

再委託の可否については、契約書で規定がなされていることが多いので、まずはクライアントとの契約書を確認しましょう。

  • まずは再委託が可能か契約書をチェック
  • 契約書で規定されていない場合は、契約の性質が請負か準委任かをチェック
準委任契約、請負契約、違い
準委任契約と請負契約の違い、区別の基準ある契約が、準委任契約か請負契約であるかは、しばしば訴訟で争われたり、印紙税との関係で国税局や税務署からの指摘を受けたりして問題になるこ...

著作権等の知的財産権を適法に取得できているか

再委託の業務がコンテンツの制作などの場合、コンテンツの著作権を委託先のフリーランスから取得しておく必要があります。また、コンテンツが第三者の権利を侵害していないことの保証や著作者人格権の不行使の特約を定めておく必要があります。

契約書の条項例は以下のとおりです。

条項例

第〇条(著作権等の帰属)

1.受託者は、委託者に対し、本契約に基づき受託者が制作した成果物が第三者の権利を侵害するものでないことを保証する。

2.本契約に基づき受託者が制作した成果物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条所定の権利を含む。)を含む一切の知的財産権(以下「著作権等」という。)は、受託者が委託者に成果物を納品したときに、受託者から委託者に移転する。

3.受託者は成果物について著作者人格権を行使せず、また第三者からも行使されないことを保証する。

著作権について契約書において定めておかないとどうなりますか?
著作権が制作者であるフリーランスに残ることになり、クライアントとの関係でトラブルが発生してしまうおそれがあります。

下請法違反にならないように注意

自社の資本金が1000万円をこえる(1000万1円以上の)場合、フリーランスに対し製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託をする場合、下請法が適用されます。

下請法の適用範囲

下請法が適用される場合、親事業者には以下の義務、禁止事項が課せられ、違反した場合には公正取委員会から勧告を受けたり、罰則が課せられることがあります。

親事業者の義務

親事業者の義務 義務の内容
書面の交付義務※罰則あり 下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない(法3条)
書類の作成保存義務※罰則あり 下請事業者の給付、給付の受領(役務提供委託をした場合にあっては、下請事業者がした役務を提供する行為の実施)、下請代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録を作成し、これを保存しなければならない(法5条)
下請代金の期日を定める義務 下請事業者の給付を受領した日から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない(法2条の2)
遅延利息の支払義務 下請代金を支払わなかったときは、下請事業者に対し、下請事業者の給付を受領した日から起算して60日を経過した日から支払をする日までの期間について、年14.6%の遅延利息を支払わなければならない(法4条の2)

親事業者の禁止事項

 

親事業者の禁止事項

  • 受領拒否の禁止(法4条1項1号)
  • 下請代金の支払遅延の禁止(法4条1項2号)
  • 下請代金の減額の禁止(法4条1項3号)
  • 返品の禁止(法4条1項4号)
  • 買いたたきの禁止(法4条1項5号)
  • 購入・利用強制の禁止(法4条1項6号)
  • 報復措置の禁止(法4条1項7号)
  • 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(法4条2項1号)
  • 割引困難な手形の交付の禁止(法4条2項2号)
  • 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(法4条2項3号)
  • 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(法4条2項4号)

秘密保持契約を締結する

フリーランスにクライアントや自社の秘密情報を開示することがありえる場合は、フリーランスと秘密保持契約を締結しておく必要があります。

秘密保持契約の内容は、クライアントとの秘密保持契約の内容によっても変わってきます。

クライアントとの秘密保持契約では、多くの場合再委託先にも同等の秘密保持義務を負わせるというものになっているでしょう。

秘密保持契約書のひな形
秘密保持契約書のひな形、書式「秘密保持契約書を作成することになった。」 「秘密保持契約書のひな形、書式を見たい。」 という契約書担当者の方のために、秘密...

再委託をすることを想定してクライアントとの契約書を作成する

ここまで読み進めてきた方はお気づきになられたと思いますが、再委託するフリーランスとの契約の進め方は、クライアントとの契約書の内容が影響してきます。

ですので、クライアントとの契約書作成段階で、再委託をすることを想定して契約書を作成しなければなりません。

以下、参考となる条項例を挙げます。

再委託に関する条項

第〇条(再委託)
受託者は本業務の全部または一部を、第三者に再委託することができる。

秘密保持に関する条項

第〇条(秘密保持)

1.委託者及び受託者は、相手方の承諾なくして、本契約に関連して相手方から秘密である旨を明示して開示された営業上または技術上の秘密情報(以下「秘密情報」といい、秘密情報を受領する側を「受領当事者」という。)を第三者に対して開示、漏えいしてはならない。ただし、以下のいずれかに該当する情報は秘密情報には含まれない。
(1)開示された時点において、すでに公知であった情報
(2)開示された後に受領当事者の責任によらないで公知になった情報
(3)開示された時点において、受領当事者が既に了知していた情報
(4)正当な権限を有する第三者から、受領当事者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報

2.前項の定めにかかわらず、受領当事者は、秘密情報を、自己の役員、従業員及び業務の再委託先、ならびに、本契約に関して受領当事者が依頼する弁護士、公認会計士、税理士その他のアドバイザーに対して開示することができる。

3.前2項の定めに基づき、受領当事者が秘密情報を第三者に開示する場合は、第三者に本条と同等の秘密保持義務を負わせなければならない。

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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属) 基本情報技術者

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